ピックアップのポールピースに貼り付ける薄い磁石“スライス磁石”の作り方を説明しますと以前のblogに記したのですが、入手したAmpeg Babybassのセットアップに手間と時間を取られてなかなか“スライス磁石”を作る事が出来なかったのですが、やっとの事で作ったので説明します。画像多目ですが、興味のある方はご覧ください。

IMG_5817.jpg 先ずは“原材料”の駄目になった(駄目にした?)ピックアップから取り出したポールピースです。


 このポールピースの厚みを1mm以下に薄くしたいのですが、ポールピースの材料の磁石は“石”だけあって金鋸では切れません。で、私がカットするのに使った道具はペンチです。

IMG_5818_20140114195559134.jpg ペンチの刃にポールピースを咥えます。その際は2mm程度ポールピースの頭を出します。2mm以下だとカットの際にポールピースが細かく砕けてしまうので・・・。そして、ペンチを右手で力一杯握り締めるのですが、その際に左手はカットされた磁石が飛んで行かない様にペンチ部を覆います。手の肉を挟まない様に注意します。


IMG_5819_20140114195601507.jpg 磁石は金属と異なって結晶体なので、断面は“切れた”と言うよりも“割れた”ようになります。


IMG_5820_20140114195606a9c.jpg 次はこれを薄く削っていくのですが、その際に小さな磁石片をどうやって固定するかをあれこれ試行錯誤してみた結果がこちらです。磁石片を挿し込めるようと同径の孔が開いているものを工具箱から探したのですが、弦高を測定する際に使う“隙間ゲージ”の孔に着目しました。


 隙間ゲージ自体は1mm程度の厚みがあるのですが、何度もスライス磁石を作る際に使用しているので、穴周囲は0.4mm程度に薄くなっています。

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IMG_5823_2014011419564253c.jpg この隙間ゲージの固定方法ですが、作業台の上にネオジウム磁石を2つおいてこれを土台とします。


IMG_5824_2014011420030165e.jpg これに隙間ゲージを乗せます、というか(磁力で)くっ付けます。


IMG_5826_201401142003156c1.jpg 隙間ゲージとネオジウム磁石とを万力で作業台に固定します。


IMG_5828_20140114195649a7c.jpg 1方のネオジウム磁石の真上に隙間ゲージの孔が乗るようにセットします。このネオジウム磁石には、カットした磁石片をくっ付けて固定するのと、後述するサンダーで削る際の熱を冷やす“ヒートシンク”という2つの役目があります。


IMG_5843_20140114200454c65.jpg 隙間ゲージの穴にカットした磁石を入れます。土台のネオジウム磁石にくっ付きます。


IMG_5845_2014011420045318e.jpg これをベビーサンダーで削っていくのですが、その際には作業台に水をいれた小皿を近くにスタンバイさせておきます。


IMG_5847_201401142004523dd.jpg ベビーサンダーで数秒間磁石を削ったら、磁石は摩擦熱で真っ赤に焼けて、冷えたら真っ黒になってしまうので、ホンの1~2秒“チュン”と音がして火花が飛んだらベビーサンダーを磁石にあてがうのを止めて、水を指先に付けて“ジュッ”と磁石を冷やします。一連の作業中はベビーサンダーによる怪我に注意します。


 何十回も“チュン”と“ジュッ”を繰り返して磁石を削っていくのですが、この際にベビーサンダーの回転に弾かれて磁石が飛んで無くなる事もしばしばあります。いったん飛んでしまうと、小さな磁石片は見つけ難いです。後日、掃除中に何個か見つけた事もあります。その多くはスチール家具にくっ付いているのですが・・・。

 話をベース本体に振るのですが、今回の作業前にアンプからの出音をチェックして、1弦と最低音弦(4弦ならE弦、5弦ならB弦)の出力が揃うようにピックアップの高さ調整を行い、1弦と最低音弦の間の出力の弱い弦を特定しておきます。そのポールピースにスライス磁石を貼り付けして、出力のアップを図るのですから、スライスする厚みは全くもって“現場合わせ”となります。

IMG_5853_20140114200451330.jpg 今回は5弦べースの出力の弱い4弦をパワーアップする為なので、一旦は少し厚めの1mmにサンダーで削って、ベースのピックアップの出力の低いポールピースの頭に貼り付けて、アンプからの出音を聞きながら厚みを決めていきました。


IMG_5858_20140114200450192.jpg 厚みが0.5mmに近くなったら、ベビーサンダーの使用は止めて、ヤスリを使い手作業に切替えます。


IMG_5861_20140114202114f3c.jpg 手作業中でも力を加えすぎると、このように磁石が割れてしまうので油断は禁物です。私が作製出来る厚みの限度は0.4mm程度です。それよりも薄くするといくら優しく作業していても磁石が割れてしまいます。


IMG_5862_20140114202127bee.jpg Fenderの場合は各弦に対して2本のポールピースがあるのですが、厚めのスライス磁石が1ケでも、薄めのスライス磁石が2ケでも大丈夫です。又、JBの場合はフロントとリアのピックアップのそれぞれのポールピースに貼り付ける必要がある場合と、フロント側だけでOKの場合もありました。アンプからの出音の結果次第です。


 細かな事を説明しますが、スライスした面のエッジは鋭くなっているので、こちらを表にするとなると、サンドペーパーで面取りを行う必要があります。これも磁石が硬いのと、スライス磁石自体がとても小さいので持ちにくくて作業は大変です。

 更に(見えない)細かな事ですが、磁石にはNとS極があります。ピックアップのポールピースも磁石なので極性があります。JBではフロントとリアのピックアップのポールピースはそれぞれが逆磁性になっています。

 今回、作製したスライス磁石もポールピースを削っているので、当然2つの磁極があり、ピックアップのポールピースの頭に貼り付けする際は、その磁極に引き寄せられるようにスライス磁石の表裏を決めなくてはならないと以前は考えていたのですが、ポールピースを薄く削っていくと、当初は表裏にあった磁極が、最終的には磁石の2ヶ所の縁に移動する事が分かりました。

 という事で、スライス磁石の磁極を気にせずに貼り付けしています。最終的に各弦の出音のバランスが確定したら、ポールピースの頭に極少量の瞬間接着材を爪楊枝の先で付けて、スライス磁石を接着固定します。接着しておかないと、プレイ中に弦の方にスライス磁石がくっ付いてしまいます。接着したスライス磁石を剥がす時は、ラジオペンチで摘んで捩りを加えると、ペキッと外れます。

 以上、スライス磁石の作製方を説明したのですが、作業中には何箇所かに怪我をするおそれがある工程があります。私がこれまで作製方を説明しなかったのはそのおそれを危惧していたからなのですが、作ってみようとお考えの方は、手順をご理解の上、自己責任で怪我に注意をしながらの作業をお願いします。

IMG_5864_201401142021410c0.jpg ピックアップの高さ調整や弦のチョイスでは対応出来ない各弦の出力バランスの悪さが気になるベースは、多々あります。私の手元には未整形を含む厚みの異なる何個かのスライス磁石が、必要とされる時を待っています。


 厚みを均一に削ったり、エッジを綺麗に面取りしたりするのはとても難しくて、画像では形の“いびつ”な物もありますが、綺麗な娘(スライス磁石)から順に嫁いで(ベースに貼り付けられて)います。

 今回のスライス磁石を作るのはとても面倒なのですが、一旦その効果を実感したらもう止められません。以前はポールピースを強引に出し入れして出力のバランス取りを行っていたのですが、その際にコイルを断線させた事も何度かあります。スライス磁石ならばそんなリスクも無く、弦を交換してバランスが変わっても対応が出来ると言うのも良いポイントだと思います。
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コメント
オアシス地球さん

お久しぶりです。

薄くなれば、磁石は磁力が少なくなりますし、鉄は(受け身の)磁性体ですので、本体のポールピースに悪影響は無いと考えます。
GibsonのハンバッキングPUは鉄製のビスを上下させて、バランス取りをしていますよね。

スライス磁石を思いつく以前には、PU裏側に強力なネオジウム磁石を張り付けた事があったのですが、これはさすがに既存のポールピースに着磁等の悪影響がありそうだったので、早々に取り外しました。
おひさです。(汗)

大変遅レスですが、スライス磁石製作記事のup、
ありがとうございました。大変参考になりました。

早速、手持ちの安物のPUからポールピースを外してみたのですが
なんとポールピースが磁石ではなくただの金属で、PUの底に
板状の磁石が敷いてあるという構造でした(苦笑)

下のレスにあるように金属を使う手もあるようですが、
その場合、PUのポールピースに悪影響とかはないんでしょうかね?
安ベースならともかく、ビンテージ物だとチト気になるのですが(笑)

やはりJBだと4弦の音だけでかくて3、2弦が小さくなりがちで
困る場合が多いので色々試してみようと思います。
マチャさん

ペンチでは薄いと割れますが、2mm以上は大丈夫でした。
もっと簡単にピンポイントで出力アップするには、ホームセンターで手に入る精密ビスの薄くて小さなワッシャーをポールピースに貼ると言う手もありますが、私の場合は磁石にこだわってみました。
弦の出力バランスが良好になれば、本当に弾き易くなります。
出力バランスの気になるベースがあればお試しください。
ペンチで切れるんですね。粉々になるに違いないと思い試してみようとも思わなかった・・・。
簡単なようでやる気にならない作業ですね(笑)
「いつやるの!?今じゃないでしょう!」ですね私の場合。
ジャンクPUは持っているのでいつでも作業できるんで年内に気が向いたらやろうかなと。
UPしていただき感謝です♪
べーさん

さすがに0.5mm厚となると、万力で挟めないので、固定の方法を考えました。
ネオジウム磁石にくっ付けるのを思い付くまでは、作業ベンチの天板に直に置いていたので、その時は磁石や天板が焼き付いてしまったのですが、今は大丈夫です。
ベビーサンダーのみ借り物で、他は手持ちの工具で加工したので、私の作業工賃を無視したら、原価は0です(笑)
まさに職人技ですよね!!!
凄いっす!!!

てっきり万力で固定をされてると思ったのですが、全く違って驚きました!!
流石としか・・言えません!!!
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F-nie

Author:F-nie
回りまわって最後に辿り着いた、Vintage Fender Bass
とことん、追求しています。

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